目次からこのページに飛んできたなら、たぶん、1個下の第二条が目に入ったと思う。
第二条はこう書いてある。
原因をつかんで対策をとる。
ってやんでぇそんなの知ってらぁ!
と思ったとしたら、まだマネジメントを十分には分かっていないのである。
マネジメントは、このような誰も彼もが知っていそうな、ものすごく単純な原則しかない。
原因をつかんで対策をとるとは、日産のカルロス・ゴーンさんの言葉だが、
じゃあ誰も彼もがゴーンさんになれるかというと、実は大きな隔たりがあるのである。
これがマネジメントの難しい点である。
その難しい点は、2つある。
1つめは、
「思い出さないといけない瞬間が来たとき、ちゃんと思い出せる人間が、案外少ない」
ということである。
単純なことが、思い出せない。
周りにいないだろうか、何かトラブルが起きたときに、
「全く困っちゃうんだよねぇ」「やんなっちゃうねぇ」
とか愚痴ばかり並べる人が。
愚痴って、それだけで溜飲が下がり、満足して終わってしまう。
何も解決せず、ずっとそのトラブルを抱えていくとか。
それとは別に、あらゆることに対して、
「なぜそのようなトラブルが起きたのか」「原因はなにか」
が二言めには出てくる人、原因を突き詰めようとする人が、たまにいる。
そういう人は、大事にしないといけない。
トーマス・エジソンが少年の頃そうだったという話がある。「なぜか」の連発だったそうだ。
ところで、思い出せていない人の横で、あなたが思い出せたとして、
アドバイスをしたとしよう。
「そんなことは分かっている」
と、言われてしまうかもしれない。
それはそうであろう。分かっているのである。何しろマネジメントの原則は単純なのだから。
だが分かっているだけでは不足なのだ。
思い出せていないといけない。
だから、あなたがもし気がつく人なら、へこたれず、思い出させてあげよう。
またあなたが、もし思い出させられる側だったら、思い出させてくれた人は大事にすると同時に、
自身も、いつも理由を探すように心がけなくてはならない。

さて次に、マネジメントの難しい点の2つめである。
2つめは、
「たとえ思い出せたとしても、実行する推進力を持つ人が、案外少ない」
というものである。
マネジメントのポイントの1つが、推進力なのだが、これを持てない。
だから、いい線いって思い出して、原因をつかんだというのに、実行できない。
周りにいると思う、
「いやー分かってはいるんだけどさー、
でも納期が迫って時間が足りないしさー、
人手も足りないし、予算も足りないしさー、
とりあえずXXXということにしてお茶を濁してだなー、
いずれYYYするということにして今回はさー」
みたいな感じで、いろんな理由を並べて、未来に先送るような期待を持たせて、 結局やらない、というような人が。
リーダーは、リードするから、リーダーというのだが、残念ながらリードできるリーダーは多くない。
あるいはアクションが出来るのがマネージャーであり、見ているだけならウォッチャーとでも名前を変えたら良い。
というわけで、もしあなたが優れたマネージャたらんと欲するなら、
- 単純な原則をちゃんと思い出し、
- そしてそれを言い訳せずに愚直に推進する、
この2つだけでも、たぶん上位20%のマネージャになれるはずだ。
思い出すためには、訓練で脳みそに刻み込む・焼き付ける・叩き込む、必要がある。
私が子供の頃の話だが、正月とかで親戚が集まったときに、 大人たちが酒を飲んでなにやら話をしているのを聞いていると、 「いいかい、1足す1は2だよ」 みたいな、誰でも分かるような事をさも大事なことのように述べたりしていて、 全く酔っ払いはしょうがない、と思ったりしたものだが、 今から考えると、 あれはそのような単純なことを脳みそに焼き付ける訓練を彼らはしていたのかもしれない。
ティコ・ブラーエは惑星の位置について山盛りの観測結果を残し、 ヨハネス・ケプラーが、それをたった3つの法則にまとめ、 アイザック・ニュートンが、1つの運動方程式(と万有引力の法則)にして、惑星もリンゴも運動は全部説明した。
マネジメントも原則は単純であり、決して複雑ではない。