未来を考える
この先どうなるか、自問してみよう。来週は? 1ヵ月後は? 1年後は? 3年後は?
人間は神様ではないから、未来のことなんて分からない。でも、それでも、目を凝らして、眼力でもって、行く末をにらみ付け、ハッキリしない未来を見据えようとするのが、ちゃんとしたマネージャである。
このような未来を考えずに、現在のこと、目の前の事象だけが目に入り、これに対応することが仕事だ、と考えてしまうマネージャは多い。
人の話をよく聞いてみよう、その人が、主に現在の状況を語っているか、あるいは過去のことを語っているか。そうなら、余り優れたマネージャにはなりえない。未来を語る人がいたら、信じてついて行ってもいいかもしれない。
計画を立てる
道筋を決める。決まったらそれを実行するだけで成功する。
道筋が決まっているからこそ、道筋からそれたら、すぐに修正するというフィードバックループ(第二条)が廻せる。
スケジュールだったり、工数だったり。予算消化だったり。製造では日々の出来高だったり、試験ではバグの検出数だったり。
一口に言うと、予実管理だが、予実管理がハッキリしない現場というのも、まま見かける。
長いスケジュールを立てない手法もあるが(スクラムなど)、これだって短いスパン(スプリント)の計画を立て、その後に振り返り会で計画とのズレを認識する。
何を当たり前のことを、と思われるかもしれない。
そこでこの段取り重視の反対、出たとこ勝負を無意識にでも採用している現場では、どのような言葉が発せられるかを書いてみよう。
「とりあえず」
この言葉をカウントしてほしい。案外この言葉が頻繁に出てくる。
同じような言葉だが、
「いまのところは」「イマイマは」
「そうなったら、その時はその時だ」「その時になったら考えよう」
これらの言葉は未来への計画に基づいた発言ではなく、段取り無視の、行き当たりばったり方式、現実だけしか見えていないときに発せられる。
あるいは段取りはあったのだが、プロジェクトがデスマーチ化して、段取りが有名無実化・絵に書いた餅となり、危機的状況となっているのかもしれない。
スケジュールや工数などの諸表に加えて、「とりあえず発言回数管理表」なんて物を作る、とまではしなくても、とりあえずは禁句、くらいは制定してもいい。
まあそうはいっても、救急医療現場みたいに、治療の計画を悠長に立てている時間などなく、とりあえず止血しなければ、出血多量で死んでしまう、という事例もなくはない。
ただこのような場合でも、止血が成功したらその次の治療を計画するSTEPが入っているのでOKなのである。
「とりあえず」が連発される現場では、とりあえずActionが終わった後、喉元過ぎて熱さを忘れて放置されるケースがまま見られる。

プランB
段取りは、1通りではない。
コンティンジェンシープラン (Contingency Plan) という言葉がある。
第三条では、何か起きてからでは遅い、だから手を打って何かが起きないようにする、としたが、実際そううまくも行かず、何かが起きてしまう場合がある。
これができていれば「そうなったら、その時に考えよう」というセリフは出てこない。
コンティンジェンシープランは、プランBという場合もある。
暗殺教室だと、第2巻 第13話でビッチ先生が、プランCまで図示された図で説明している。

虎視眈々と狙う
この第四条に沿って段取りを考えたとき、強い推進力を、やろうという確固たる意志を、持っていながら、段取りの解がどうしても見つからず、現状においては実施不可能だ、と結論せざるを得ない場合がある。
これは第一条後半で述べた、なんだかんだと言い訳をしてやらない、というタイプとは違う。
2つの違いは、へらへら言い訳しながら「やらない」というか、
歯ぎしりして、苦虫潰して、残念だ、とても残念だが、「やらない」というかの違いである。
だから「やらない」決断をしたとき、自分がどういう表情をしているか認識しよう。
あるいはその決断を表明したマネージャはどういう表情をしているか観察しよう。
ヘラヘラしているだろうか。誠に遺憾だ、という表情か。
そしてこの表情の違いは次のSTEPに効いてくる。
ヘラヘラしているほうは、もうすっかり安心しきって、目指したものを忘れてしまい、たとえそのあと実施のチャンスが来ても、見逃してしまう。
遺憾だ、と思っているほうは、目指したものを実はあきらめておらず、見果てぬ夢として心に刻み、そちらのほうを未だ見据えたままなので、チャンスが来たとき、即座に反応、再始動して段取りを考える。
幸運の女神は準備している人にだけ微笑む、とはパスツールの言葉だそうだ。
この言葉にはいろんな解釈ができるだろうが、その解釈の1つが、このあきらめずに虎視眈々と狙うこと、だと考える。